80」カセットテープ

 カセットテープが再び注目を集めていると言う。若い人は存在自体知らないかもしれない。
 我が家に初めてそれが来たのは小学校低学年の頃だと思う。ある日父が電気屋でS社のものを買って来た。
 それは30cmW×20cmD×5cmHの四角い形をしていて「カセットテープレコーダー」と言う名前だそうで、音を録音したり再生したりできる機械で、中に入っている「カセットテープ」と言われるものに音が録音されるらしい。初めて見る私たち家族にとって一体何に使うのか全く想像がつかず、とりあえず、そのまま録音ボタンを押すことで、内蔵されているマイクロフォンで、その場の皆の話し声を録音してみたのである。そのとき、そのままの音が記録されていること、消さなければ何度でもいつでも聞けることに感動したのを覚えている。しかし、何よりびっくりしたのは、自分の声を聞いて、変な声だ、と思った事である。他の人には自分の声がこんな風に聞こえているんだ、と。
 今日の新聞の訃報。カセットテープの開発者として知られるオランダフィリップス社の元製品開発部長、ルー・オッテンスさんが6日、94歳で亡くなられた。世界で累計一千億本が売れたカセットテープ。何より、音楽をいつでもどこでも聞ける基礎を作り上げた功績は大きい。わたしもカセットテープが無ければこれほど音楽を身近に愛することはなかったであろう。多大な影響を受けた一人である。
 ありがとう、オッテンスさん。
 ご冥福をお祈りします。

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