26」芸術の秋

 今は芸術の秋。毎年この時期の新聞には全日本吹奏楽コンクールの結果が掲載されている。
 思い出すのはもうだいぶ昔、娘が中学校の頃の話だ。娘は何を考えたのか入学して吹奏楽部に入った。活動のピークは2年の時、都大会に出場し、先生も皆も最高の演奏だと思っていた。間違いなく全国大会に行ける、と先生は自信があったらしい。しかし、「ダメ金」しかもらえなかった。都大会では参加校全てに金賞、銀賞、銅賞が与えられる。中でも金賞をもらうと全国大会に出場できるのだが、いくつかの学校は金をもらっても出場できないところが出てくる。そう同じ金でも価値が違うらしい。それを業界用語で「ダメ金」と呼んでいる。なんと悲しいのだ。金をもらったのに一等賞ではないのだ。全く価値のない「金」なのだ。担当の先生も、審査員に抗議に行ったらしいがもちろん覆らなかった。
 も一つは、吹奏楽の聖地と言われていた(「吹奏楽の甲子園」とも呼ばれていた)普門館が昨年取り壊されたことである。知る人ぞ知る普門館は、あの有名な、カラヤン/ベルリンフィルの来日公演も行なっている有名なところで、長期にわたり吹奏楽の全国大会が行われてきた場所である。娘の頃も、皆で「普門館を目指せ!」を合言葉にたくさんの吹奏楽の子供達たちが夢見ていたと聞いている。ほんのちょっと感傷にひたる秋の夜長であった。

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